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ピンクグレープ・フラジール
「俺、黒髪好きなんだよね」
そんな彼の言葉を聞いていたから、
ずっと染めないでいた髪。
染めたくても染めないでいてあげたのに、
結局、金髪女に盗られたから、
好きにやらせていただきます。
あなたのものだった黒髪を、
ピンク色に変えさせていただきます。
新しい恋を呼び込むピンク色に。
「液、しみませんか?」
美容院のお兄さんが聞く。
ええ、しみますとも。
心がしみます。
痛いです。
涙が出ます。
「ホントに大丈夫? しみない?」
「ホントに、ホントに大丈夫ですから、私をピンクにしてください」
それから、
鏡に映る私は、幸せを取り込むピンク色。
これで、春は来るのかな。
淡く頬をピンクに染めて、私はぎこちなく笑った。
【end】
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