わたしは、リコ

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 そうと決まれば急がなくっちゃ。  しょうた君のそばを離れ、玄関のドアを力いっぱい押します。  ドアが開いたとたんに、冷たい風がぴゅうと入ってきて、しょうた君のところまで飛んでいきました。 「うあ、さっぶ……! ……あれ?」  ドアが開いて不思議そうなしょうた君。でもわたしのしわざだとわかったのか、すぐに眉毛をふにゃっとさせて『仕方ないな』の顔をしてくれました。 「そうだな。気分転換に散歩でも行くか」  そうです。その意気です、しょうた君。今ならきっと、間に合います。  ネイビーのダッフルコートを着てポンポンの付いたニット帽をかぶったら、それはいつもの散歩の格好です。  わたしは、その格好のしょうた君が一番好きでした。 「まだまだ寒いな、リコ」  わたしに続いて外に出たしょうた君が、そう言いました。その声は、白い息と共に空へ昇って消えていきます。  わたしたちは、いつもそうしていたように、家を出て南にまっすぐ進みました。途中、小さな川にかかる小さな橋を渡って、運動場で野球をする小学生たちの横を通って、その奥にある公園を目指します。
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