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公園が近づきてきて、わたしはなんだか急にドキドキしてきました。
この時間なら、あの子はきっといる。でももし、いなかったら……──。
どうかどうか、いてくれますように。祈るような気持ちでしょうた君を見上げると、しょうた君も同じ気持ちなのか、どこか緊張した顔つきをしていました。
すっかり裸になった木々たちの間をノロノロと歩いていくと、パッと視界が開けました。
そこは、大きな芝生の広場です。
みんなが遊べる遊具はなにもないけれど、わたしはこの公園が好きでした。
「あ…………」
あっ! いました!
広場をぐるっと囲むようにして置かれているベンチに、あの子は座っていました。いつもと同じように、わたしにはとうてい読むことができない難しい本を読んでいます。
ゆっくり時間をかけて近づくと、あの子もこっちに気づいたようでサラサラの長い黒髪を揺らしながら、顔を上げました。
わたしはつい、いつもの癖でしょうた君の後ろに隠れてしまいます。
あの子の黒目がちの瞳がまん丸に見開き、それはまるで大きなビー玉みたいでした。
「あれ……市川君、久しぶりだね。どうして……?」
しょうた君は、あの子と視線が合うなり頬を染めました。
こらこら、しょうた君。見とれている場合ではありませんよ。
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