わたしは、リコ

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 わたしがズボンをちょいっと引っ張ると、しょうた君は思い出したように口を開きました。 「え、あ、ちょっと気分転換がてら散歩しててさ! さ、佐藤は?」  しょうた君、声が裏返ってしまいました。あの子、こと佐藤さんは、くすっと笑っています。 「ふふ、同じ」 「あー、だよなぁ!」  ああっしょうた君! それじゃ会話が終わってしまいます。何をしに来たか思い出してください!  ハラハラするわたしをよそに、今度は佐藤さんが話しかけてくれました。 「市川君、試験はどうだった?」  『シケン』とは『ダイガクジュケン』のことを指しているのだと、ピンときました。しょうた君が、このところ毎日のように机に向かっていたことを思い出したからです。 「あー……ま、まぁまぁかな。佐藤は?」 「市川君の『まぁまぁ』は、よく出来たってことだもんね。私は……結構できた、かな」 「よかったじゃん」 「市川君も」  ニッコリ笑う佐藤さんとは裏腹に、しょうた君の表情が曇っていきます。  『サトウハケンガイダッテサ』  何度もしょうた君から聞かされてきた言葉。それはつまり、佐藤さんが遠いところへ行ってしまうという意味だと、しょうた君はわたしに教えてくれました。  
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