好きだけじゃ表せない

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* 拝啓 たくみ先輩。 中学高校と、部活で本当にお世話になりました。このように手紙を書いたのはずっと伝えておきたいことがあったからです。 私はこの高校に合格した時、正直吹奏楽部をそのまま続けて入部しようか迷っていたんです。書道部とか演劇部とか…そういうのもいいかなって。けれど、そのまま吹奏楽部に入ったのは、たくみ先輩が理由でした。 高校受験が終わり、高校入学前にこの高校の定期演奏会を見に行った時のことです。定期演奏会自体もとても質が高くて感動したのですが、何より衝撃を受けたのは先輩の姿だったんでした。こういってはあれですが、私たちの中学はそこまで上手くなかったし、それなりにしかやる気もありませんでしたよね。けれど、先輩が誰よりも吹くことに夢中になって楽しそうにしているのを見て、吹奏楽部に入ることを決めました。先輩をここまでにさせる何かがきっとこの部活にはあるんだ、この人の隣でそれを学んで技術を盗みながら吹けるんだったらこんな幸せなことはないと思ったんです。 たくみ先輩、そのおかげで私の高校生活は全て貴方基準になったんです。ひたすら先輩を目指して部活をやってきました。私が頑張ってこれたのは先輩のおかげなんです。 それだというのに、先輩には沢山の迷惑をかけたように思えます。先輩が上手で負けることが悔しくて嫉妬したこともありますし、きっと私は態度が悪い後輩だったんじゃないでしょうか。今になってとても恥ずかしい思いで一杯です。 先輩は私の高校生活のきっかけをくれ、色づかせてくれました。先輩の隣でサックスを吹くことが何よりも楽しく辛い時間でした。上手な貴方の隣で吹くことはある意味苦痛でしたから(笑) 私はきっとこの感謝を忘れないと思います。いや、絶対忘れません。貴方という人のおかげでこの高校生活での部活が何よりも大切なものになったことを覚えています。本当にありがとうございました。 たくみ先輩、私は貴方のことが大好きです。 井上彩香 *
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