好きだけじゃ表せない

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「ねぇ!たくみ先輩どこか知らない!?」 私は同じ部活だった先輩を探して、校舎の中を走り回っていた。同じ部活の友人と会うたびに、私は食いつくような勢いで先輩の居場所を聞いていたのである。 今日はバレンタインデー。色恋沙汰でいっぱいのこの日、先輩はそれどころではないだろう。何しろ大学受験間近なのだから。 「はぁ…やっぱり先輩来てないのかなぁ…。」 この時期三年生は自由登校期間であり、特別授業を取っている者と自習をしたい者のみが登校してくる。つまり来たくなければ来なくて良いのだ。 いやいや、先輩は家で勉強するように見えないし!先輩が家で一人で勉強できる人には見えないしね! 好きな人に対してそれはないだろと自分に突っ込みながら、私は三年棟の階段から渡り廊下に出た。私と先輩は中学、高校と同じ吹奏楽部なのである。しかも楽器のパートまで同じで高校では隣に座って吹いていた。そのため何となく先輩の性格は把握しているのである。 「でもこんだけ探していないんじゃぁ…」 「彩香?」 名前を呼ばれて顔を上げると、同じ部活のサックスパートの美樹が大きな紙袋を持って立っていた。 「あれ、美樹もチョコ配り歩いてんの?」 「そ!彩香は部活の時ね。」 わかったと頷いて私は取り敢えず聞いてみる。 「ねぇ、たくみ先輩知らない?」 「え?たくみ先輩?先輩ならさっき購買の方いたけど?」 なんと。聞いてみて正解だった。というか、購買ってすぐそこなのですが。 「彩香と美樹じゃん。」 ふと私たちは声をかけられて横を見ると、はたまた同じ部活のパートメンバーであった。 「花枝、購買行ったの?」 花枝の手には購買のメロンパン。私と美樹は昼食の時間を削って色んな人にバレンタインチョコを配り歩いていたのである。まあ、私は先輩のみだが。花枝にはついでに確認しておこうと思う。 「行ったよー!お昼ご飯忘れちゃってね。」 「たくみ先輩いた?」 「え?たぶん居なかったよ。」 ど、どういうことだぁぁぁ! 「うっそ、さっきいたのに。」 「じゃまだ近くにいるかもよ。」 花枝の言葉に少しだけ私は希望を見出した。そうだよ、学校にはいるんだから。 「あそこにいるの、たくみ先輩じゃない?」 「え?」
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