好きだけじゃ表せない

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先輩の受験が終わったら、私は先輩をご飯に誘うつもりでいた。でも正直先輩が誘いに乗ってくれるか分からなかったし、ワクワクした気持ちより拒否されたらどうしようという思いの方が強い。 先輩の受験が終わった次の日、私はいそいそと携帯でメッセージを打っていた。文字を打っては消し、打っては消し…。 先輩って返信遅い上に短文なんだよなぁ。私が長文すぎるとかえって良くないかも。…なんだか言い訳めいたこと書くのは良くない?でも書かないと、ご飯一緒に行きたくて仕方ないって思われちゃう? それはなんだか恥ずかしいから嫌だなと思い、私は畳の上で両足をバタバタさせた。悩みに悩んだ挙句送ったのはただ一言。 「一緒にご飯食べに行きませんか?」 珍しくすぐ返信があって驚いた。いいよ、の一言。それだけなのに胸が踊るし、今から何着て行こうと躍起になった。 とは言っても、先輩にはおそらく近いうちに会うのだ。その時にでも何処に食べに行くか決めれば良いだろう。あまり期待はしていないが、ホワイトデーだって近い。去年のことを考えると、まともなものは期待できなかった。吹奏楽部は何しろ女子が多く、男子はもらい放題なのだ。まぁつまり、お返しが大変なのである。手作りしてくるのなんて、私の同期の馬鹿男子共くらいだ。先輩は去年大きなゴミ袋に沢山の何種類かのお菓子をどっさりと入れて、 「はい、この中から選んで。」 どれだけ面倒くさがりなのか…。というか、興味なさすぎでしょ!私とかしっかりと箱に入れた上に、先輩の分だけ手作りしたお菓子多めに入れたというのに。 ホワイトデー当日、私たち吹奏楽部は定期演奏会の準備で大忙しであった。 毎年練習には卒業したOB・OGまでが駆けつける大掛かりなものとなる。私も私とて、ヒップホップステージでは踊り子として踊るし、OB・OG合同ステージではピアノの担当もあるので、うかうかしてられなかった。先輩と顔を合わせる暇もろくになく、まず来ているのかでさえ不明。一日中忙しく動きながら、目も忙しなく動かして私は先輩を探していた。
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