好きだけじゃ表せない

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「これ、ネックレス、ですか…?」 「と見せかけて違うものだったらどうする?」 「どうもしませんよ。」 私の返答がつまらなかったらしい。先輩は少し不満そうな顔をしたので、思わず吹き出しそうになってしまった。 「こんな良さそうなもの貰っていいんですか?」 「じゃないと俺がそれを買った意味なくなるんだが。」 あぁ、これは確かに私に買って来てくれたものなんだな。そう思うとこそばゆい変な気持ちになった。顔の筋肉の制御が利かず、ニヤケてしまいそうになる。先輩は笑ってはいなかったが、とても機嫌が良さそうだった。 「なぁ井上。」 「何ですか?」 「男性から女性へのプレゼントでネックレスって意味があるらしいな。」 「…そういう説もありますね。」 私の何とも言えないようなそんなテンションに先輩は何故かツボったようだった。くくくっと変な笑い方をして、近くにあった電柱に寄りかかる。 「つけてみ、それ。」 「今ですか?」 「うん。」 私は黙ってネックレスの入った箱を開けて、恐る恐るつけようとする。なかなか上手くつけられずに見かねた先輩が後ろに回ってつけてくれる。先輩の指が時々首筋にあたり、反応しないのに精一杯で目をぎゅっと瞑った。 あ、ついたかな。そう思ってお礼を言おうと後ろを向こうとした瞬間のことだった。 左肩と首にに自分の髪の毛でない髪の毛がさらりと当たり、ズシリとした重さが加わる。 「え?」 何が起こったの? しばらくしてやっと先輩が私の肩に頭を埋めていることを理解した。理解したと同時に体に力が入り、固まってしまう。 「井上。」 耳元で囁かれ思わずビクリとする。低く静かな声が耳の鼓膜を振動させ、反響したような声がやけに色っぽく聞こえた。 「俺さぁ…お前が俺の後輩で良かったよ。」
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