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彼女はアイロニーに口元をゆがませて続ける。
「ところがそれからの私は、どんな気の迷いか、なんとしてでも生きてやろうと思うようになった。何故か、と言われると正直答えに迷う。多分、環境が変わったからだと思う。」
「というと?」
「自殺騒動の後、私はひとまず王立病院に移されたんだが、そこがどうも居心地がよくてな。恐ろしい王室のことも、死んだ母や兄弟のことも、煩わしい自分の身分のことも、何も考えなくていい。ただ毎日、気の赴くままに日が昇って沈むだけ。私はそんな毎日に幸福を感じていたんだな、きっと。」
彼女は細めた目に暖かさを携えて彼を見つめた。
「それで私は退院の前日、病院を抜け出して、この地に落ち着いた。それからは昼夜を問わずに不老不死について研究してるよ。もう死にたくはないのでね。」
彼は彼女の話を、自分に照らし合わせて聞いていた。彼女の気の迷いと呼ぶその感情は、かれには痛いほどに理解できた。
「それで、君はどうなんだ、式。」
彼女は急に彼に話を投げてきた。
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