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「あら、シキ君ね。私はナターシャーレー。ナターシャでいいわ。よろしくね。」
「よろしくお願いします。」
彼は少し上ずった声で答えた。そんなこれを知ってか知らずか、彼女は話を進める。
「今日は薪が切れた。あと油だ。持てる分だけ出してくれ。」
「レイさんまたそんなこと言って。まだ夏ですよ。そんなにしょっちゅう火使って料理してるんですか。それとも錬金術だったりして。」
彼女は冗談めかして付け加えた。彼女は呆れたように笑って答える。
「冗談きついな、ナターシャ。私は錬金術や魔術についてはさっぱりだ。なに、こいつが大の風呂好きでな。店の風呂だけじゃ物足りないといって家で一人でずっと入ってるのだよ。それこそ薪を湯水のように使ってな。」
そして彼女は彼が少し不満げな顔をしているのに気が付いた。彼女は彼だけに見えるように舌を出して少し申し訳なさそうな顔をした。
「まあ、いいです。表に出てるやつを持って帰ってください。お代は、その、前借りた分から引いといてください。」
彼女は少し気まずそうな顔をして彼女に言った。彼女は助かるといって彼を連れて店を出た。そこで思い出したように、扉から顔だけ出してナターシャに声をかけた。
「悪い、忘れてた。これからは式が店に来ることが多くなると思うが、よろしく頼む。」
そう言い残して彼女は大きな木の扉を閉めた。チリンと、優しいベルの音が響いた。
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