3話 魔女の世間話

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彼女はそう言いながら近手の椅子に腰かけて彼の方を向いた。 「なんだか最近、いつも以上に街が騒がしくないか?まあ騒がしいのはいつものことだが、なんだか少し不穏な空気を感じるというかなんというか。」 街の中に一点の陰りも見いだせなかった彼は声まで漏らしてえらく驚いた。彼の見る限りではそんな様子は見られなかった。 「いや、俺も詳しくは知らん。が、正式な発表はまだなんだが、王族の誰かが街に来るらしいんだ。」 「ほう。王族とな。」 「それも噂では、ツェイカー第二皇子がお見えになるかもしれない、と。みんな不安なんだろうな。」 そういう彼自身も不安げな顔をしていた。 「魔女狩り皇子、か。」 彼女はぽつりとつぶやいて、あとから声に出していたことに気が付いたような様子で笑って言った。 「おっといけない。つい口が滑ってしまった。誰かに聞かれでもしたら大変だ。魔女裁判にかけられてしまう。」 「おいレイ、冗談でもそんなこと言うな。本当に殺されるぞ。」 大男は深刻な顔に不安を露わにして、小さな声で言った。彼女も少し真剣な顔になって席を立った。
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