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「まあいい。今夜は酒はいいよ。こんな気分で飲む酒ほどまずいものはないからな。帰るよ。」
彼も彼女の背中を追いかけて、逃げるように店を出た。
外はもう真っ暗で、ランプも満足に立っていない裏通りでは、夜の店から溢れ出る灯りだけが道の頼りであった。
「レイさん、さっきの話だけど」
「ん?さっきの話か?安心しろ。私は君だけの娼婦だ。他の男と寝たりはせんよ。」
夜の光に照らされて妖しく笑う彼女を見ていると、からかっていると分かっていても、変な気を起こしてしまいそうだった。
「その話じゃないです。魔女狩り皇子の話です。」
彼は紅くなった顔をぶるぶる横に振って答えた。
「魔女裁判っていうと、あの魔女裁判ですか。」
彼はぽつりぽつりと呟くように声を出した。
「君の言うあの魔女裁判がどの魔女裁判なのかは知らんが...。
まあいい、魔女裁判というのは、神によって禁止されている魔術を行う者を、摘発して処刑する。大雑把に言うとそういう儀式だ。」
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