3話 魔女の世間話

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「ああ。ツェイカー=ロマノフ=ヴェールズシュタットだ。それがどうかしたのか?」 彼女はきょとんとした、あどけない表情で尋ねてくる。 「...レイさんって、いま何歳ですか?」 刹那、彼の背筋にぞっと電流のような寒気が走った。先ほどまで彼の目の前にいた彼女は、いつの間にか彼のすぐ後ろに立って片手で彼の腕を縛っている。 「女性に年齢の話はするなと教わらなかったのか、式。」 余った方の左手は彼の首に添えられて、その細くたなびくあてやかな指は彼の首筋をつつつとなぞっていた。 「それとも、お姉さんに教えて欲しいのか?」 熱くとろけるように甘い殺気が耳元に流れこんでくる。底のない恐怖と色気に、彼はぴくりとも動けなかった。 「とまあ、今のは冗談だ。なに、悪気はなかったんだが、君があまりにも愛くるしいのでな。つい。」 彼のカラダはようやく彼女の束縛から解放され、大きな安心感と、身体にしたたる冷汗を感じた。まだ身体はぷるぷる震えて思うように動かない。 「そう泣きそうな顔をするな、式。この愛いやつめ。」
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