1話 魔女のアトリエ

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「と、まあ、なんでもいい。とにかく、君の名前は式で、昨日まで人間だったけれど、今日は私のホムンクルス。そういうことだ。いいかい?」 その言に対して彼は無言で頷き返した。それを見て彼女は満足そうに微笑む。 「よし、それじゃあさっそくアトリエの掃除をお願いしようか。お姉さんについてきてくれ。君を作るのにそうとう散らかしてしまってだな。」 そう言って立ち上がった彼女を、彼はただじっとして見つめていた。彼はまるで覚えのない仕事を押し付けられた工夫のような顔をしていた。 「ん、なにかね。もうお姉さんなんて歳じゃないとでも言いたいのか?」 彼女にぎろりと睨まれて、彼は慌てて立ち上がって声を出した。その眼には歳月が生み出す貫禄がにじみ出ていた。 「いや、そうじゃなくて、僕働くんですか?」 彼は心底いやそうな声で言った。 「当然だろう。私が何のために苦労して君を作ったと思ってる。」 彼女は何をいまさらといった顔で彼の瞳を追いかけて言った。 「それともなにかね。君はほかに頼るあてでもあるのかい。君の話だと、今君は一文無しの捨て子か放浪者みたいなもんなのだろう。」 そういわれると、彼は閉口せざるを得なかった。もし彼女の言ってることが本当だとすれば、彼の頼りの綱は彼女しかいないのだ。 そんな彼を見て何を思ったのか、彼女は彼の肩を叩いて弾むような声で彼に声をかけた。 「大丈夫だって。食事も睡眠も、通の人間程度の生活させてあげるから。その代わりにしっかり働いてもらうがな。」
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