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2話 魔女の昔話
アトリエを後にした二人はやけにながったらしい階段を上り、地上の食卓へと足を進めていた。馴れない身体で過重労働を強いられた今の彼には、階段を上ることも億劫だった。
「レイさんはあれを今まで一人でやってたんですか。」
声音に疲れをにじませて彼は聞いた。
「まあそうだな。あそこまで散らかしたのは今日が初めてが。」
彼女はこれくらいで潰れてもらっては困る、といった体で答えた。
「散らかすとか、そんなかわいいレベルじゃないですよあれ。なんだかんだでまる一日飲まず食わずで、それでやっと終わったんですからね。」
「まあ、だから今君は魔女の晩餐に招待されてるわけじゃないか。あまりそう文句を言ってくれるな。」
その食卓は、魔女の晩餐と称するには何とも淋しいものであった。
かたいパンが二切れと、得体の知れない未知のスープ。それから年季の入ったワイン。これきりであった。
「さあ、冷めないうちにとっとと食べてくれ。君にはまだやってもらう事がある。」
パンをもしゃもしゃとほおばりながら言う彼女に、彼はげんなりした様子で答えた。
「まだ何かあるんですか。僕は早く寝たいんですけど。」
「私と一緒に街へ行く。今度から一人でおつかいに行かせられるようにな。」
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