2話 魔女の昔話

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 彼もパンをむしゃむしゃと口に入れてスープで流し込む。そのパンは岩みたいにかたくて噛めたものではなかった。 パンはあれだが、スープは手が凝んでいてとてもおいしかった。肉で出汁をとった味噌汁のような、それでいてあっさりしていて、いくらでも飲んでいられそうであった。 彼女は右手にちぎったパンを添えて、ひたむきにスープばかりを飲む彼を、少し眩しそうに見つめていた。 そしてふと思い出したといった声音で口を開いた。 「そういえば、ぶしつけかもしれんが、君はなんで大怪我なんてしてたのかい。」 それを聞いた彼は椀に貪りつくのを留めて静止して、少し気まずそうな顔をした。 「なに、ここには君と私しかいない。そして私は君の主だ。何も差し支えないだろう。」 テーブルに備え付けてある木箱からワインを注ぎながら彼女は言った。そのカップをテーブルに置く。ことり、と湿った音がする。 彼はためらいながら、ゆっくりと口を開いた。 「僕は、自殺したんです。」 彼女は面白いとでも言いたげな目をして彼に続きを促した。
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