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彼もパンをむしゃむしゃと口に入れてスープで流し込む。そのパンは岩みたいにかたくて噛めたものではなかった。
パンはあれだが、スープは手が凝んでいてとてもおいしかった。肉で出汁をとった味噌汁のような、それでいてあっさりしていて、いくらでも飲んでいられそうであった。
彼女は右手にちぎったパンを添えて、ひたむきにスープばかりを飲む彼を、少し眩しそうに見つめていた。
そしてふと思い出したといった声音で口を開いた。
「そういえば、ぶしつけかもしれんが、君はなんで大怪我なんてしてたのかい。」
それを聞いた彼は椀に貪りつくのを留めて静止して、少し気まずそうな顔をした。
「なに、ここには君と私しかいない。そして私は君の主だ。何も差し支えないだろう。」
テーブルに備え付けてある木箱からワインを注ぎながら彼女は言った。そのカップをテーブルに置く。ことり、と湿った音がする。
彼はためらいながら、ゆっくりと口を開いた。
「僕は、自殺したんです。」
彼女は面白いとでも言いたげな目をして彼に続きを促した。
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