1 『異世界転移は突然に』

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 そもそもこんな田舎の高校で起こってもあまりいいお話になるとは思わない。  例えば、公開告白だとか、起きたとしよう。  もし、相手が当人を恋愛対象として見ていない場合どうなるだろうか。  相手は大衆の前で当人の申し出を断った時、当人に恥をかかせ、どことなく罪悪感を得るだろう。  だと言って、思ってもない人と付き合うのは嫌ではないかもしれないがそこまで嬉しくないだろう。そしてそれからの生活で冷やかしを受けることになる。  自分に起きはしないと思うが、困るのだ。  じゃあもう一つ、相手が当人と両想いの場合だ。この場合、能受ともに嫌な思いはしない。  だが田舎はここが怖い。田舎であることで人口が少ない。人口が少なければ容姿端麗な人の人数は少なくなる。少なくなれば彼、彼女らを狙う人の競争率は高くなる。  つまり、その場でめでたくカップルとなった人に目標を奪われ、陰で憎んでいる人の存在が怖いのだ。憎しみを持った人は何をするかわからない。  いじめとか、マジ怖い。  これらの理由から特に田舎の学園祭では公開告白など望み薄なのだ。怖いから。  俺は運命だとか奇跡だとかは信じない―――はずなんだが・・・ 「―――イツキ君」  目の前の少女がてれてれと恥ずかしそうにイツキの名前を呼ぶ。     
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