受験生も恋しちゃうんです

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受験生も恋しちゃうんです

「慎吾ぉ、今日どーする?」 京田君の声が聞こえる。 静かな自習室。京田君は気を遣って小声で言ってるけど、アメフト部で大男の野太い声は重低音で響く。 「今日は……俺、たい焼き食べたいなあ」 「たい焼きの気分じゃねーし、俺は。わかった、あとで塾でな」 そう言ってリュックを肩掛けにした京田君は左手をひらひらさせて自習室を出て行った。 「さてと、俺も行くか」 小声でつぶやくと、慎吾くんも机の上の参考書やワークブックを鞄に片付け、立ち上がった。 ガタンと椅子を引く音がして、彼も出て行った。 全ては私の背後で行われてること。 見なくてもわかる、自習終わりのルーティン。 私は「コホン」と小さく咳払いして、そそくさと机の上に広げていた物をスクバにしまい込んだ。 もうすぐ8時。学校の自習室が閉まる時間だ。 マフラーを首に巻いてコートを羽織り、暖かい教室から一歩出ると、誰もいない廊下はしんとしてる。 「寒いっ!」 思わず声が出た。床から冷たい空気が全身に這い上がってくる。 私はこれから駅前にある予備校に直行。 京田君と慎吾君も、電車で次の駅にある大手予備校に行くのだ。
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