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弥生が新幹線で東京に帰る途中に比呂志から電話が入った。比呂志はまだ事務所で仕事中だったが、弥生が気になって席を外して電話をかけた。
スマホが鳴り比呂志だと分かると、慌てて弥生はデッキに出て電話に出た。
『はい』
力なく、弥生は返事をした。
『月島です。今日は彼の三回忌だったよね。俺も用があって君の会社に昼間行ってたんだけど、流石に会えなかったのでなんとなく気になって電話しました』
比呂志の優しい声に、弥生は泣き出してしまった。
『弥生さん?』
びっくりして、比呂志は心配になった。
『今日は会社休みました。今、彼の三回忌法要の帰りです。私、彼のお母さんから言われました。もう、和也を忘れなさいって』
弥生の言葉に比呂志は嫌な予感がした。
『やっぱりあの時、私も死んでしまえば良かった。そうしたら、こんなに苦しくなかったのに。今私は、和也のそばに行くこともできないんですもの』
嫌な予感がより一層濃くなり、比呂志は今どこにいるのか尋ねるも弥生は言わない。
『先生との電話楽しかったです。先生は一度も和也の存在を否定しなかった。ありがとうございました』
弥生が電話を切らないように比呂志は続けた。
『待って!俺はまだ君に言ってないことがあるんだ!正直に言うよ!俺は君が好きだ!電話したのも下心だよ!君がいつか、彼を忘れればいいってずっと思っていた!俺はそんな卑怯な奴なんだ。それにまだ言ってなかったけど、俺は本当の愛なんて信じてなかったんだ。君に会うまで!』
弥生は比呂志の必死な声をじっと聞いた。
比呂志の叫ぶ声が聞こえ、仕事中の弁護士達やパラリーガル達がびっくりして、姿はないが比呂志の声がする方を見る。でも比呂志は他に聞かれているのも気付かず構わず続けた。
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