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ホストのマジ恋 後編
「潤、今月の売り上げひどいぞ。どうした?」
店の運営責任者である一也さんに呼び止められた。
一也さんはこの店の元No.1プレイヤーで、今は経営者側にまわっている。
家出同然で東京に出てきて行き場のなかった俺を拾ってくれた恩のある人だ。
俺もいずれは経営者側に進みたいと思っているので、No.1の座は守り続けなければいけないのだが……
「接客にも全然身が入ってないし、おまえらしくないぞ。」
「……すいません。」
自分でも目の前にいる女の子に集中出来てないことはわかっていた。
せっかく来てくれた指名客を怒らせてしまったし、水割りを作る時にグラスを倒すという凡ミスまでしてしまった……
太客の麗子さんにも、止められたのに自分のキャパ以上の無茶な飲み方をしてしまいテーブルで酔いつぶれた。
サイアクだ……
「好きな女でも出来たか?」
─────好きな女………
蛍ちゃんの顔が浮かぶ……
最後に見ることさえ出来なかった…泣かせてしまった蛍ちゃんのことが頭から離れない。
「いえ…忘れたい女が出来たんです。」
俺がそう言うと一也さんは大きなため息をついた。
「重症じゃねえか。」
一也さんはしばらく休めと言ってくれたのだが断った。
今休みをもらっても考えるのは蛍ちゃんのことばかりだと思ったからだ。
たった二回しか会っていないのに……自分でもこんなにあとを引くとは思ってもみなかった。
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