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向こうから蛍ちゃんが白杖を触擦させながらこちらに歩いて来るのが見えた。
ヤバっ……まだなんて声を掛けようか全然決まってない。
蛍ちゃんに見えないように電柱の陰に隠れた。
蛍ちゃんは俺に気付くことなく目の前の角を曲がって通過して行った。
よくよく考えれば隠れる必要なんてまったく無い。
慌てすぎだ俺っ!
今日は酒も飲んでないし、香水も付けてない…だから匂いでバレるなんてこともない。
俺は何食わぬ顔をして蛍ちゃんのすぐあとを付けた。
声を掛けるようなハプニングが起きないかな?
また自転車を倒してくれないだろうか……
そんなことを考えながら歩いていたら、なにもない道端で蛍ちゃんがピタリと立ち止まり後ろを振り向いた。
「……潤さん?」
───────────!!
なぜバレたっ?!
マズいぞ……
ずっと付けていたこともバレているのだろうか?
これじゃあまるでストーカーだ。
「歩く靴音でわかりました。コソコソと付けるだなんてストーカーみたいです。」
なんでいつもこっちの考えてることを言い当てるんだよ……
頭が痛くなってきた。
俺は観念するかのように蛍ちゃんの前へと歩み寄った。
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