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寮生活をしている聖也達と別れ、都内のタワーマンションに部屋を借りている俺はタクシーを捕まえるために駅前へとやって来た。
空車表示のタクシーが来たので手を上げようとした時、背後でガシャンガシャンと大きな音が鳴り響いた。
見ると、駅前に並べて置かれていた自転車がドミノ倒しのように倒れていっていた。
そばには倒れていく自転車を呆然と見送る若い女性が立っていた。
「ヤダっ、この音…いったいどこまで倒れたの?!」
30台は倒れたかもしれない……
彼女は深い溜息をついたあと、ぎこちない手つきで手前の自転車から元に戻し始めた。
横を通り過ぎる人は皆忙しそうで、誰も手伝おうとはしない。
「大丈夫?怪我しなかった?」
俺は彼女にそう声をかけて手伝ってあげた。
「すいませんっありがとうございますっ。」
彼女はペコペコと謝り、また自転車を戻そうとするも要領を得ない。
むしろ倒れた自転車を直している俺の周りでうろちょろするもんだから邪魔だった。
「じゃあ。」
ちょっとイラっとしながらも全部戻し終えたので去ろうとしたのだが、彼女に呼び止められた。
「……あの…白い杖どこかに落ちてないですか?」
「……杖?」
最初に自転車を倒したところにその杖は落ちていた。
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