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───────これって……
「本当にありがとうございましたっ。」
彼女は俺に向かって深々とお辞儀をした。
俺は改めて目の前にいる彼女を観察してみた。
身なりは清潔できちんとしている。
メイクも普通のOLとなんら変わりない…綺麗だ。
俺に話かける時もちゃんと顔を見て話してくる。
本当に信じられない……
────────見えてないだなんて……
彼女はその白杖で前方の路面を触擦して歩き出した。
背筋をピンと伸ばし、颯爽と歩く姿はとても凛としていた。
白杖を持っていないと誰も視覚障害者だとは気付かないだろう……
直後、また自転車に当たって何台もバタバタとドミノ倒しのように倒れた。
ウソだろ……
「すいませんっいつもボランティアで自転車を整理してくれている方が今日はいないみたいで。」
確かに無法地帯みたいになっていて、点字ブロックにもはみ出ていた。
彼女は俺に向かって謝りまくっていた。
見捨てるわけにもいかず、もう一度倒れた自転車を全部戻してあげた。
「送ってあげるよ。どこまで行くの?」
「いえ、もう…ここからすぐそばにある職場なんで。」
「働いてるの?何の仕事?」
目が見えない人がする仕事というのに単純に興味がわいた。
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