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第2話 どこも同じ
寝入ったのは明け方で昼までぐっすり眠ってしまった。メールの着信音が聞こえた気がする。
由梨は少しだけ頭を上げて布団の中から手を伸ばし、畳の上を探る。携帯電話を掴み、寝ぼけてうまく開かない目のまま画面を見る。
『今日休みでしょ。ごはん食べいこ。五時半に迎えに行く』
友人からのお誘いだ。了解と返事を送り、由梨は布団を持ち上げてまたうとうとしだした。
「馬鹿だねえ。そんなんで夜眠れるの?」
「うーん……」
「コーヒー飲むのやめた方がいいんじゃない」
「あ、そうだね」
由梨は慌ててコーヒーを汲むのを止め、ティーバッグのコーナーに移りカモミールティーなんかを選んでみる。
「疲れてんだよ。目を使うしさ」
「だったらビデオなんか観なきゃいいのに」
「その通りー」
ドリンクバーから席に戻りテーブルに突っ伏す由梨を眺めて、友人は笑う。
「少しは慣れた? 職場の雰囲気」
「全然だめ。無理。人種が違うって感じ」
四班三交代というシフト形式を取る由梨の勤務ラインは、四人ずつが一班になって同じシフトに入る。
「年下ふたりは恋バナしかしないし、年上のお姉さんの方もそれに合わせてる感じ。仕事中もうるさいし」
両肘で頬杖をつきながら由梨はくちびるを尖らせる。
「思ってたのと全然違う」
「そりゃあ、悪かったね」
「美紀ちゃんのせいじゃないけどさ」
慌てて言い訳したものの由梨の表情は晴れない。
「同じ工場系でも場所によって違うんだね」
当たり前のことをつぶやいて目を細めつつ美紀はコーヒーを飲む。
この友人の職場の話を聞いて由梨は工場系の仕事もいいと思い、アウトソーシングの人材派遣会社に登録し今の勤務先に勤め始めた。
以前は大手チェーン洋菓子店のケーキ売り場で働いていた。契約社員だったせいか二年目でマネージャーという役をつけられ、アルバイト店員たちを監督する立場になった。平日の昼間に出てくる主婦たちと、入れ代わり立ち代わりシフトに入る高校生や大学生女子たちの管理をしなければならなくなったのだ。
それだけなら別によかった。主婦たちは若輩の由梨のことを気遣ってくれたし、バイトの女の子たちとは友だち感覚でいたから仕事の指示もしやすかった。
由梨が苦手で大変だったのは、接客だ。店頭で帳簿を書いたり受注の手配をしながら、売り場が立て込めばお客の相手をしなければならない。そうでなくとも、遠慮のない客は電話中でも早く注文を受けろと手を振って催促してくる。苛立っても顔に出したらいけない。思っていることが顔に出やすい由梨には、これが難しかった。
『なんだ、その顔は!』
二回目に客に注意されたとき、自分は接客に向いていないと確信した。
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