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外から聞こえるコマドリのさえずりで、ヨセフは目を覚ました。カーテンの隙間から漏れる朝日が眩しい。シーツの中に感じる自分以外の温もりと、ぼんやりと軋む足の付け根に、現実がじわじわとせり上がってくるのを嫌でも感じた。
大変なことをしてしまった。
まったくあの時の私は冷静ではなかった。何かに取り憑かれてしまったかのようだった。これまでずっと清廉潔白でいた私が、一瞬にして台無しになってしまうとは。なんと恐ろしいことであろうか。
横で眠っている、漆色の少年を見た。すうすうと寝息をたてて、実に安らかに眠っていて、それがいっそうヨセフを責め立てる。ああ、すべて夢だったら良かったのに。
ぱちりと、少年は目覚めた。横で青ざめているヨセフを余所に、ひとつ伸びをすると、おはよう、と小さな子どもが母親にするように挨拶をした。
「ヨセフ、どうかした?」
「私は、もしかしてとんでもないことをしてしまったのではないかと……」
「とんでもないこと?パンでも盗んだの?」
「そうではなくて、ジュリアンと、その……してしまったことだよ」
気まずそうに咳払いをするヨセフに、なあんだ、とジュリアンは笑い飛ばす。
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