真冬の夜の夢

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「…どういう事?」 「俺にもサッパリわかんね、」 どうにかこうにか、学生時代のサークルのスウェットを着せて。どういう原理で猫が人間になったかを尋ねたけど、彼も訳が分からない様子だった。 「切り替わった瞬間の体感とか無いの?」 「うん。お前がジロジロ見てくるから、どうしたのかなと思ったら…こんな感じ?」 綺麗な毛並みの茶トラだった通称「くうちゃん」は、今や明るい茶髪の美男子になっていた。話し方がチャラついていることが気になるけど、スラリとした長身とキメ細かな肌の彼は、飼い主の贔屓目なしでもカッコいい。 高い餌、あげてて良かった。なんて馬鹿なことを考えた。 「…これからどうするの?」 結構深刻に尋ねたのに、彼の声は呑気だった。 「どーもこーも、何にも変わらねーだろ?」 「エッ!?」 ここに住むの!?この美男子と、私が!? と、思ったけど、 「逆にエッ!?追い出す訳!?こんな丸腰の猫出身の俺を!?すぐ野垂れ死ぬぜ!?」 と言われて思い直した。くうちゃんを飼い始めたのは私だ。独り立ちさせる義務がある。…のかは分からないが、追い出すのは可哀想な気がする。 「…とにかく、ちょっと考えよう。落ち着いてこの先のこと考えよう、」 ブツブツ呟いていると、 「なあ、そんなことより飯は?今日はマグロがいいな〜」 と、彼が戸棚から缶詰を取り出した。 人間になってもそれ食べるんだ…なんて突っ込むより先に、彼は器用に缶詰を開けて。手で摘んで頬張っていた。
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