1219人が本棚に入れています
本棚に追加
「おう。お疲れ」
こいつが家に来てから、朝は一緒に乗せて行って、帰りも時間が合うときはこうして迎えに来ている。
「飯どうする。何か食いたいモンあるか」
「うーん……」
助手席でシートベルトを引きながら涼子は考える。
初めてこの車に乗せた頃は、緊張してたのかぎこちなく見えたが、今は自分ちの車みたいに馴染んだ様子だ。
「お昼は会社のお弁当だったし、何でも大丈夫ですよ。椿田さんは?」
「俺も別に。そしたら、今日は外行くか。ここんとこ作ってもらってたから」
「外だと飲めないけど、いいんですか?」
「別に、帰ってから飲みゃいいし。……お前飲みたけりゃ一人で飲んでもいいぞ」
からかうと一瞬黙って、それから首を振った。
「遠慮します。椿田さんと二人だけの時以外は飲みません」
「……そりゃ、完璧な答えだ」
煙草を灰皿に揉み消して、左手を伸ばした。
頭に手を置いて
「いい子だ」
その手を顎に持ってくると、くすぐったそうに涼子は肩をすくめる。
最初のコメントを投稿しよう!