ウチのお嬢さん ～『流れる川に浮かぶもの』より

６

　新しい煙草に火を点けると、涼子が言う。

「椿田さんが言わせるんです。椿田さんじゃなかったら、そんなこと言いません」

「またそういう……お前のそれが俺おかしくさせてンの分かってねえだろ」

「……分かりません」

　ふてくされたように涼子は言う。

　振り回されてるのはこっちだってンだ。

　煙吐いて、むすっと唇結んだ涼子の頭撫でて、俺は言った。

「悪かった。何でも好きなもの食わせてやるから」

　俺が、年齢やら何やら気にして悩むことは、きっと無くなりはしない。

　けど、こいつを手放すことなんて考えられなくなった今その悩みには意味がない。

　だから、この先はこいつの気持ちに任せるしかない。というか、結末はこいつが勝手に決める気がする。

　……それがある意味快感っていったら変態ぽいが。

「で、なに食いたいんだ。ウチのお嬢さんは」

『ウチのお嬢さん～流れる川に浮かぶものより』了