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好奇心に負け、膝の上でリボンを解いた。
割らないようにそうっと取り出すと、ダウンライトのオレンジの光を受けてなお、うすく空色に輝いている。ヒール部分にあしらわれたダイヤモンドが3つ、プリズムを作りながら控えめに存在を主張した。
ポイントカードの景品にしては豪華だな。
別に女装の癖があるわけではないけれど、好奇心から履いてみたくなった。本当に足は入るのか?いや、入ったとして女性の足までか。
柔らかいラグの上に靴をおき、そうっと自らの足を滑り込ませる。
「入った」
ぴったりと吸い付くように足にフィットしたガラスの靴は、踵のダイヤがきらっと強く光をはなった。そして今度は問題がおこる。
脱げない。
「ふ、ふぬーっ」
渾身の力で靴を引っ張るも、抜けない。石鹸水を隙間から流し込んでみたり、靴べらを無理やり差し込んでみたりしたけど、抜けない。無理して履いた訳では無いのに、なぜ?
「嘘だろ?」
思い切って近くにあったゴルフクラブを手に取る。最初は弱く、徐々に力強く靴を叩くも、割れるどころかひびが入る気配もない。
「もう、なんなんだよ…。」
対処する気力も失せ、スーツを脱ぎ捨ててベッドに横たわったオレは、自然に眠りへいざなわれた。
「おはようございまーす!」
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