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見る間に大きくなり、かぼちゃの馬車となって空中に待機する元ペンダント。ご丁寧に白馬もいなないている。
「ヒヒーン」
頬をつねって確認するオレ。やっぱり夢じゃない。
「さあ乗って乗って!」
シーラに急かされわけも分からず馬車に乗り込む。扉が閉まった瞬間に馬が激しくいななき、晴天の空を駆け出した。
(ああ、この時間に馬の声はご近所迷惑だな)
ぐんっと、ジェットコースターのような重力を感じたかと思うとあっという間に景色が飛んでいく。気付くと会社の目の前に降ろされていた。馬車はそのまま走り去った。
「はい、一つ目のお願い叶えましたからね!」
シーラの一言でガラスの靴のダイヤが一つ消えた。なるほど辻褄は合っている。
「言い忘れてましたけどお願いは24時間以内にしてください。それを過ぎると私も靴も消えます。あと」
「まだ何かあるのか、こっちはもういっぱいいっぱい…」
「きゃー!変質者?」
「やばっ、警備員さん!」
何、変質者だと?と振り向くと、黄色い声の女性たちはオレを指差して叫んでいた。自分の格好を見下ろすと、昨日寝たときのままだ。パンツ一丁に、見えてないけどガラスの靴。ばっと手で上半身を覆い隠し、慌てて近くの街路樹の裏に逃げ込む。
「ちょっと、妖精さん!」
「なんですか?」
「服!スーツ出して!」
「かしこまりました!」
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