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一通りの雑務を終えて席に着く頃には、同僚も出社し本業が始まる。ばたばたと仕事をこなすうちにあっという間に時間が過ぎ、シーラもどこかへ姿を消していた。
「ふーっ」
21時を周り退社の準備を始める。フロアに残っているのは自分を含めて数人だ。皆に声をかけてエレベーターに乗り込むと、またも元妻に遭遇した。
「今日はよく会うわね」
「ああ、こんな遅くまで残業か?」
「お互い様よ」
一階に到着し、ロビーで彼女を振り返る。
「それじゃ、また明日。お疲れ」
「え…ええ。」
先に外へと出て駅に向かうところで、シーラがぱっと出現した。
「乙女心のわからず屋」
「どこ行ってたんだ?」
「奥さん、誘ってほしそうでしたよ」
「元、な。そんなの気の所為だ。別れて5年だぞ?」
「おじさんたち、なんで離婚したんですか?」
「大人の事情だよ。」
「子供扱いしないでください。」
ゆっくり歩を進めながらシーラと会話する。心なしかしょんぼりしている彼女が気になり、肩においでとジェスチャーする。
ためらいがちに肩に乗るシーラは、眉間に皺を寄せて難しそうな顔をしていた。
「なあシーラ。君は願い事三つ叶えさせないと怒られたり、罰せられたりするのか?」
「へ?いえ、別にそんなことはないです。ただ…」
「ただ?」
逡巡の末、シーラは告げる。
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