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私は生まれながらに生死に関わる重い病気を患っている。
それは、治らないと言われており、行き長らえる程度の治療しか出来ないのだと、病院でそう言い渡された。
なんのために自分が生きているのか。
これから苦しむために行き長らえなくてはならない。
私には死ぬ自由もない。
私は未知の病の1人目だった。
治療と称した薬の人体実験が行われ、実験用のモルモットにされるのだ。
私は既に人生の十年をこの病院で過ごしており、家の事も遠い記憶の中で薄れていた。
そんな中で私は何度も夢を見るのだ。
深い、深い森の中で、幼い自分が迷子になり、それを助けてくれる……バルトと過ごす夢を。
病院の窓から明るい外を眺める。
夢で彼に会えるから私は死にたくないなと思うようになった。
その話を看護婦にすると、精神病の可能性とかで精神安定剤を投与されるので、口外されることのなくなった私だけの記憶だ。
何年も入院していると、父や母も滅多な事では来なくなった。
娘が寂しい思いをしているところに、元気な妹が生まれたという報告をしてきたときは驚いたものだ。
私1人を取り残してみんなが幸せになっていく。
私には何もない。
生きていても楽しいことはない。
死にたい。
死にた……。
『ほら、生きな』
あの優しい言葉が眦を熱くした。
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