第1部【生存意欲】第1章【対して人は】第1話【簡単に死ぬ】

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私は生まれながらに生死に関わる重い病気を患っている。 それは、治らないと言われており、行き長らえる程度の治療しか出来ないのだと、病院でそう言い渡された。 なんのために自分が生きているのか。 これから苦しむために行き長らえなくてはならない。 私には死ぬ自由もない。 私は未知の病の1人目だった。 治療と称した薬の人体実験が行われ、実験用のモルモットにされるのだ。 私は既に人生の十年をこの病院で過ごしており、家の事も遠い記憶の中で薄れていた。 そんな中で私は何度も夢を見るのだ。 深い、深い森の中で、幼い自分が迷子になり、それを助けてくれる……バルトと過ごす夢を。 病院の窓から明るい外を眺める。 夢で彼に会えるから私は死にたくないなと思うようになった。 その話を看護婦にすると、精神病の可能性とかで精神安定剤を投与されるので、口外されることのなくなった私だけの記憶だ。 何年も入院していると、父や母も滅多な事では来なくなった。 娘が寂しい思いをしているところに、元気な妹が生まれたという報告をしてきたときは驚いたものだ。 私1人を取り残してみんなが幸せになっていく。 私には何もない。 生きていても楽しいことはない。 死にたい。 死にた……。 『ほら、生きな』 あの優しい言葉が眦を熱くした。
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