近くて遠い

5/6
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 少しして、ゆきさんがはにかんだように笑った時、ようやく時が動き出したように感じた。 「び、びっくりした……。一瞬、自分に言われたのかと思って、ドキドキしちゃったよ」  彼女が胸をおさえながら頬を赤らめるのを見て、胸が軋んだ。  今、彼女の顔をこんなにも赤くさせているのは自分なのだと思うと、甘くて、切ない気持ちになった。 「でも、はる君にそんな風に想ってもらえるなんて、その子は本当に幸せね。どんな子なのかなぁ」  あなたの見せた照れたような笑顔があまりにも綺麗で、目を細めたくなってしまうぐらいに眩しくて、今にも泣いてしまいそうだ。 『ゆきさん、ごめんなさい。あなたのことなんです』     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!