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始まりの音
ズカズカと無遠慮に踏み込んで、こじ開けていくような激しい振動とは程遠く、体の中で弾ける響きはどこまでも丸みを帯びていて、胸の真ん中をノックし続ける。
声も音も言葉も全てが優しい熱で包まれていた。
自分でも驚くほど自然に腕が上がっていた。
この心地良さの中で、いつまでも揺れていたい。
奏でられる音と同じように、どこまでも楽しそうに弾む彼の姿に目を奪われる。眩しいほどに照らしてくるライトの光さえ、もう私の視界を奪うことはできない。飛び散る汗に、ステージの上で跳ねる姿に、溢れ出す眩しさに、隠しきれない若さに、その全てに、彼がいた。
大丈夫。
夢じゃなかったのなら。
私はまた歩き出せる。
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