【借金漬けの男】

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 石畳の上を暫く歩くと、商店が並ぶ中に一軒だけ小さなホテルがあった。  中に入り、フロントの者に訊ねると部屋はがらがらに空いているのだという。  とりあえず宿が取れたと安堵したのも束の間。  受け付けを担当した女が久しぶりの客だと朗らかに笑うものだから少々不安になる。  そんな経営状況でよくつぶれないものだと思っていたが、どうやらこのホテルは大衆向けのレストランも兼ねているらしく、そちらはそこそこ繁盛しているらしい。  これはディナーに期待できそうだ。  案内された二階の部屋に入る。  ベッドと机と椅子だけが置かれた簡素な部屋だ。だが掃除が行き届いており丁寧に管理されていることが伺えた。  このホテル、どうやら当たりだったようである。
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