「可愛いよ、楓ちゃん。」

3/12
127人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
****───。 ああは言ったけど楓ちゃんがそんなことするなんてわからなかった。 もとから天然なのは知ってたけどそこまでとは......。 楓ちゃんには言えなかったけど今日はいろいろと疲れていた。 俺は1回聞いたり見たりすれば覚えれるが、やはり責任みたいな環境が一気に変わったせいでもある。 1番印象に残っていたのは......とりあえず挨拶は終わらせて、社長室に入ってから詳しいことを話した。 「これから言野背社長の秘書になります。英 瑠偉(はなぶさ るい)と申します。」 黒縁眼鏡に黒髪ロン毛を1本に束ねていて、俺と同じくらいの年で顔は整っている男性。 いかにも生真面目なサラリーマンって感じで少し近寄りがたい。 何よりめんどうくさい名前、そう覚えた。 でも秘書になるってことはそこそこの成績ってことだろう。 父さんから聞いた話だが、この人は俺の父さんが辞める少し前に就いたらしい。 だから俺の父さんのことも一通り知っているわけだ。 俺の場合は先祖代々で受け継がれているから少しコネ入社な気がするけど俺だって全てがコネではない。 そのために嫌な留学を2度してきたんだから、本来なら楓ちゃんといたかったけど......。 「俺のことは親から聞かされてるかな?まあ、俺が失敗した時はフォロー宜しくね。」 「はい。承知しております。」 うわ...。すごい律儀な人だな。 なんか本家の使用人たちみたいで嫌かも。 ここでの俺はじゃないんだから気負わないでほしい。 「あのさ、そんな堅苦しくしなくていいよ?」 「いえ、立場をわきまえておりますので。」 「・・・お願いだから。堅苦しくしないで。」 俺の一方通行な我儘になるけれども、俺は社長椅子に座ってお願いをした。 楓ちゃんに甘えるようにすれば楓ちゃんなら紅潮して渋々承諾してくれる。 それが可愛らしいんだよね......って、今は違う。 「・・・・・・。」 いや、黙るのかよ!?なんで?ねえ、なんで? 無表情のまま黙られると恐怖でしかないんだけど!! 「あのー・・・英君?」 「わかりました。社長がそこまでいうのであれば。」 「・・・わ、わー。ありがとうー。(棒)」 突然眼鏡のブリッジを押し上げてそう言った。 俺もなんだか嬉しいのかなんなのかよくわからなくなった。 不思議な人なんだな、きっと。 「社長、早速ですが仕事を。」 「御意。」 「・・・御意?」 「ああ、ごめん。なんでもない!」 なぜかおかしな発言をしてしまった。 不思議なのは俺かもしれない。 そこから仕事をすることになったがあの親父が溜めていたらしく、あれのせいで溜まっていた仕事を片付けさせられた。 久しぶりに「親父」と思った。 そのまま大量の仕事をして疲労したまま帰宅すると楓ちゃんが拗ねていて、俺はその可愛さから疲労が一気にぶっ飛んだ。 さらには「私を頼って」発言をされたらどんな男でもイチコロだ。 ものすごく抱き寄せたい衝動にかられた。 まだまだ明日からも仕事はあるからそれなりに頑張らなきゃだよな。 「楓ちゃんは今日なにしてたの?」 「・・・・・・。」 いや、だからなんで黙るの!
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!