月灯りの下で

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 なにしろ、男の子と夜中に二人っきりで表を歩くなんて、私の21年間の人生の中では初めてのこと。それにわざわざ追いかけてきてくれたなんて……あらあら、結構いい雰囲気じゃないの、と(そそのか)す甘い声も胸の奥から湧いて来たものだから、私はその厚かましい考えを全力で押しつぶした。  違う。彼は若干18歳にして心構えが紳士なのだ。だから、変に勘ぐっては失礼になる。  ……って、まあ、紳士かどうかはともかく、彼が好青年であることについては、私も太鼓判を押す。入部した当初から感じのいい子だなとは思っていたが、この一週間ずっと一緒だったおかげで、いろいろと分かってきたのだ。  まず、真面目そうな外見と裏腹にノリが良い。私みたいなのでも一緒にいるだけで楽しい気持ちになれるのだから、周囲に対して気遣いができるタイプなのだと思う。そういえば、先ほどの打ち上げでも、まだ未成年だからアルコールが一ミリも体内に入っていないくせに、場の雰囲気に合わせて明るく振る舞っていた。愛想笑いしかできない私なんかより、よほど大人だ。  そして、外見もなかなかのもの。私は芸能人に疎いから名前はすぐに出て来ないが、イケメン俳優で似たようなのがいた気がする。  そんな子だから、彼と同学年の女の子たち三人なんかは、よもやファンクラブでも作ったのでは、と勘繰ってしまうほどの盛り上がりっぷりで、合宿中も何かにつけてまとわりついていた。     
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