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お先でした、とようやく表情を和らげた彼が返してくれた時にも、とろくさい私はまだ状況を呑み込めていなかった。だって、これって所謂……。
「……ま、まぁ、一人で500mlって多すぎるよね。あんまり飲み過ぎて夜中のトイレに行くんじゃ面倒だし」
「そうですね」
私のひねり出した後付けの理由があまりに強引だったせいか、彼は苦笑していた。
その引きつった笑い方……多分、セリフに女子感が無いとでも思っているのだろう。
確かにその通りだ。私だって自覚はしている。でも、可愛いことなんて言えるわけがない。
だって私なんかが無理に背伸びをしたところで、蔑んだ目で見られるのがオチなのだ。そういうのが許されるのは見た目も性格も可愛い女の子だけであって、私には似合わない。
そのことを自覚したのは、大学に入ってすぐのことだった。周りの女の子たちがとにかく眩しくてたまらないことに気付いて、私はひどく驚いた。
どうやら、私が女子ばかりのぬるま湯で過ごしている間に、みんなはどうやったら男子から可愛く見られるか、互いに切磋琢磨して女を磨いていたらしい。そんな中で飾ることを知らない私は、異質な存在だった。そして案の定、男の子たちはキラキラした女の子たちにしか目を向けなかった。
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