プロローグ

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ふわふわとした毛に覆われ、三角の耳と大きな尻尾をぴこぴこと揺らしている獣が、そう言いいながら、腕を組み、ふよふよと浮かんでいる。 「多くは存在しないんで、根気よく探すしか無いでしょう」 こちらの獣は、毛に覆われているが、先程の獣に比べると、その毛は少し硬そうで、耳は丸みを帯びている。 凛とした姿勢で、人間と同じように歩いている様は、どこか品を感じる。 「しかし、ひでぇもんだな」 辺り一帯は、空が無く、地と呼べるものは無く、山もなければ、谷も無い。 どっちが上で、どっちが下か、あっちが左、こっちが右か―― 見分けが付かない状態だ。 というよりも、見分けを付ける必要が無いという表現が正しい。 この空間は重力が無くなっているのか、建物の残骸、何かの標識、折れた木、ありとあらゆる物が宙に浮いており、まさに、文字通り混沌としている。 「私達の眷属も、ほとんどの者が消えてしまいました」 「あぁ……というか、おめぇ2つの足を動かしてあるいてるけどよぉ、ここじゃ意味ねぇよな」 「……気にしないでください。癖のようなものです。前に進む時は、2本の足を動かした方が、気持ち悪く無くて良いじゃないですか」 「そんなもんかねぇ……」 その空間を、彷徨いながら進んでいる2つの生命体は、辺りをキョロキョロと見渡し、何かを探している。     
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