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「さあ、早くしないとこの空間も、人だったものも完全に消えてしまいます」
「つったってよぉ……ここまで、結構時間かけて探したんだぜ? もう、何も無ぇんじゃねぇのか?」
「手ぶらで帰るわけにもいきません。日本をみてきた私達が、何も結果を残せないとなると、この先ずっと笑いものですよ」
「そうなんだけどよぉ……」
三角の耳をしている生命体は、不満で満たされているようで、やる気の無い態度だ。
丸い耳の生命体は、片方の生命体のしっぽを掴み、引っ張るように進んでいる。
「ほら、ちゃんとして下さい」
「んあぁ、明日からちゃんとやるからよぉ――ん、何だ」
ふたつの生命体は、なにかに気付いたのか、鼻をひくひくとさせ、辺りの気配を探っていた。
「……この辺りで良いでしょう」
「おっしゃあ、はじめっとすっか」
2匹の獣は立ち姿になって、お互いを向き合った。
そして、両手を合わせて、目を閉じる。
何か念じているのか、その格好のまま、しばらく動かない。
しばらくすると、二人の周りの空間が揺らめいた。
そして、その揺らめきが、2匹を中心に、少しずつ広がってゆく。
どれほど時間が経っただろうか、しばらくその行為を続けていた2つの生命体が何かに反応した。
「ん? なんでぇ?」
耳が、ぴんと立つ。
「おや?」
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