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しっぽが、ぴくっと揺れる。
ふたつの生命体は、あたりの様子を探るように、耳を左右に動かした。
そして、うっすらと片目を開ける。
一見、辺りは変化が無く、相変わらず雑多な状態が広がっていて、混沌とした風景のままだ。
「どうやら、あちらから感じるようですね」
「そうみてぇだな」
ふたつの生命体は、先程まで行っていた行為を止め、気配を感じた方を見ている。
「おっしゃあ、ようやくお出ましだ」
「向かいましょうか」
ふたつの生命体は、反応があった方へ歩を進めた。
しばらくして、立ち止まった生命体は、確認するように辺りを見渡す。
「この辺りでしたね」
「おうよ」
「では、早速」
まるい耳をした生命体が、両手を胸の前に持ってきて、手の平を広げた。
そして、拍手をするように、一度だけ合わせた。
はじけたような、高い音が辺りに響く。
「お、いたぞ」
三角の耳の生命体の方が見ている方に、なにやらうっすらと光るようなものがある。
それは、火のように揺らめき、太陽の様に丸い、サイズとしてはソフトボール程度の、まるで、人魂のような物だ。
「これで、笑われるこたぁねぇぞ! さっさと終わらせて帰っちまおうぜ」
「そうはいきませんよ。これからが始まりなんですから」
「だよなあ……」
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