旅立ち

6/7
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
英二が幾度となく仲裁に入るなど省吾の近くでいつも居る事が多かった。 いわば親友と言える一人であった。 「省吾、出ていくか」 「英二か......今日、フェリーで行くわ。学校、がんばれよ」 「また電話でも手紙でもするし。」 「また関西へ来たら遊ぼうや、成人式にも帰ってくるしな」 「まあな。出たらバンドするんやろ?」 「その為に行くんやから」 省吾は終始笑顔を目一杯つくりながら他愛のない会話に終始すると 英二との別れをした。後に再会するまでの。 ------------------------------------------ 今日はフェリー乗り場までバスで向かう事になっていた。 バス停では美恵子とは言葉を一言も交わすことなく無言の時間が過ぎる。 美恵子は口を開けば省吾に優しい言葉をかけることなく常に叱った。 褒めるという事が自然と出来ない性分であった。 バス停からバスが遠くに見えると初めて心臓の鼓動を感じた。 この地を離れるのだ。 バスに乗り込み1区間、2区間、3区間...... 見慣れたいつもの街の風景が流れていく。 とバスが停留所で停車すると 「省吾!!!省吾君!!」 聞いたことがある声が耳に突き刺さった。母親の姉、三奈江だった。     
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!