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自宅前にバス停のある三奈江が省吾がこの停留所に来るのを待っていたのだ。
窓を開けるようにというジャスチャーを見て窓を開けると三奈江は
「省吾!あんた、がんばりよ!大丈夫やから!あんたはやれる。がんばり!応援しゆう」
省吾にとって三奈江だけが自己肯定をしてくれたように感じた。
涙がこぼれそうなのを必死で堪えながら、省吾は うん、うん と
声にならない声で返すのが精一杯だった。
省吾が後々10年以上経過しても語る
”街を出された時に応援してくれたのはおばちゃんだけだった”話と
”お前は恥ずかしいから街から出ろと言われた”という話は
このような事であった。傍から見れば当然の報いであっただろう事も
当時の省吾には強く刻まれていった。
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