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神戸
省吾と二人でフェリーに乗った美恵子は意外な言葉を口にした。
「省吾とこうして二人って中々無いねえ~、あんたしっかりしいよ」
「.................」
美恵子は省吾を褒めるという事が少ない母親だった。
”Aちゃんはこんななのに省吾は”という他の子と比べて話すのが多く
学力優秀で生活態度も省吾とは対照的であった妹とは常に比較された。
省吾はそれを不満に思う事はあったが自分の行いの悪さは自覚していたので
こんなものかと思いながらもどこかで疎外感にも似た寂しさも噛み締めていた
「社長さんに会ったらちゃんと挨拶すること。偉そうな態度はいかんのやからね」
「..............」
終始互いの疎通の無いまま船は神戸港沖へと到着した
船内アナウンスが流れ、省吾は船外へと視線を移した
窓の外には見た事のない美しい夜景が広がり
一面別世界のような華々しい色が目に飛び込んだ。
ドロップのようだ・・・省吾はそんな事を考えながら
息を飲んで見つめた。
やがて岸壁に近づくと一層出港時に見た自分の故郷との差に
身震いさえしていた。
”これが神戸か.....”
フェリーが港に固定され、二人はフェリー降り場を抜けて
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