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「19歳ですよ」
「それは失礼致しました。最近厳しくてですね~」
そう言うと男性店員はバツ悪そうに台の掃除をしながら離れていった。
「お客様、本当に18歳超えてますう?」
「まあ、越えてないな」
「ははっ、でしょうね(笑)」
「何でああいう嘘をつくわけ?」
「お互い様でしょっ」
「なるほど。」
山本千絵は20歳で大学生。授業の合間と夕方からこのパチンコ店で
アルバイトをしていた。裕福な家庭に育った千絵だったが
親に経済的に出来るだけ頼りたくないという女性だった。
丸い輪郭に真っ白い肌。笑うとちょっと欠けた歯が1本あり
可愛らしいタイプの子だった。
省吾は彼女の明るさと勇気と茶目っ気に好意を抱いた。
そのまま省吾は夜の9時くらいまでパチンコを打ち続け
結局2万円ほど負けて店を出ようとした。
さっきまで何度か店内の千絵を目で追っていたが
店内を歩いて見て回っても千絵の姿を見つける事は出来なかった。
もう少し話をしておけば良かったなと思いながら
寮まで歩いた。
角を曲がると寮が見える。
曲がった瞬間、寮の前で社長夫人である松崎美智が
省吾の世話を焼く一階の住民、菅原佐江と何やらヒソヒソと話をしている。
(まずいなあ....仕事さぼってるしなあ)
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