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旅立ち
「省吾!!起きんか!!」
午前7時、布団を剥がす賢治の罵声が省吾が中学入学から与えられた
狭い納戸を高校合格祝いで賢治自らリフォームしたまだ綺麗な部屋に響いた。
省吾は地元公立高校に進学したが田舎の高校だ。地元の中学校のほぼ7割が
同じ高校にそのまま滑り込んだ。残りは水産高校や市外の工業高校、
一握りの生徒が進学校に進学という程度であった。
心底悪いという訳では無かったが、中学を卒業する頃には
ギターを手にし圧倒的存在であったBOOWYに完全に影響されていた。
当時はそのスタイルは斬新というより徹底して格好良く映った。
音楽に傾倒していく余り東京でバンドをしたいという漠然とした夢を持つようになり
高校の授業中にも抜け出して仲間と集まってバンドの練習をしたりしていた。
タバコを覚え、万引きも日常。どこかで本当に悪態を極める連中とは
一線を引く所があり、気に入らないという基準は明確に持っていた。
大人から見ると単なる逃げという印象を受けるような事も
本人には至って真面目な思考回路があった。
「行くぞ!準備せんか!」
「どこへよ.............」
「職安や!」
「なにが..........」
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