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「どういうことだ? 仮死ということか? それとも 不朽体か?」 不朽体というのは、亡くなっても 腐敗しない身体のことだ。どこかから血が流れ続けていて 死後、聖人認定される要素でもある。 ボティスが聞くと、パイモンは 「仮死と言えば仮死だな。 生命活動が “一時停止” した状態、という感じだ」と、ボティスを見上げて答えた。 「前の被害者の身体も、地界の俺の研究所で 血液や組織を採取し、検査や観察を続けている。 採取した組織片を培養してみると、細胞が生えた」 「何?」 シェムハザが聞き返すと 「身体を離れた組織は、シャーレの培地の中で 仮死から覚めた。生えてきた細胞は 新しい培地に入れて、また恒温器で培養してみてる」と 楽しそうな顔になって 「ああ、そうだ」と、またボティスを見上げる。 「被害者に吸血された 見張り、お前の軍の者だか 今のところは問題は見られない。 まだ暫くは、観察は続けることになるが」 「そうか」と、ボティスは短く答えたけど 少し安心したようだった。
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