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「勝ったのはいいけど、これじゃ謝らせるのは無理ね。土下座くらいしてもらいたかったんだけど」
「お姉ちゃん、怖い……さすが春日のうわばみ娘ね」
「何言ってんの、ケンカ吹っかけてきたのはこの人よ? うちの酒蔵バカにされて、黙ってられるわけないでしょ」
「でもうち、本当に潰れそうだよ?」
「嘘か本当かは問題じゃないの。プライドの問題よ」
どこから調達してきたのかも分からない酒瓶は、もうすっかり空になっている。少なくともそのうち半分は私が飲んだことになるが、さすがに私もこの量を飲んだのは初めてだ。きっと、もう少し飲んでいたらまずいことになっていたと思う。その前にこの男がつぶれてくれて助かった。
とりあえず酒瓶や酒器はテーブルの端に寄せて、後の片づけはこの男が目覚めたらやってもらおう。第一、どこに仕舞えばいいのか分からないのだ。
「結局この人、何だったんだろうね?」
「さあね。主催者とか言ってたけど、話聞きつけて忍び込んだ地元の不良とかでしょ」
「でもさ、不良にしちゃ身綺麗じゃない? 喋り方もおじいさんみたいだったし」
「どこが身綺麗なのよ。こんな髪ブリーチしてカラコンまで入れてるやつ、きっとろくな奴じゃないわ」
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