2.儀式

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「……あんた、やっぱり変だよ。昨夜たった一回飲み交わしただけで、どうして私にそこまでしてくれるの?」 「…………」 「蛇って、人を唆す生き物なんじゃないの? それとも、うわばみと蛇はまったく別物ってこと?」 「……どうした、天音。頭でも打ったか」 「打ってない! もう、細かいこと気にしなくていいから! だから早くあんたの名前教えて!」  捲し立てるようにそう叫ぶと、男はまた驚いたように目を見開いた。恐ろしい化け物だと思っていたけれど、この男はこんなにも人間らしい表情をする。そして人間と同じように、いや、もしかしたらそれ以上に、慈悲深い化け物だった。  少しの間、沈黙が流れる。男は私の瞳をじっと見つめ、そして深く息を吸ってから絞り出すように声を発した。 「──(なぎ)。それが俺の名だ」  なぎ。  男の声に続いて、小さく声に出してみる。  初めて呼ぶはずなのに、不思議なくらい馴染みのある響きだった。 「……凪。私を、お嫁さんにもらってくれる?」 「ああ。お前しかいない。この俺を酔い潰した、うわばみ様よ」
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