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「それにしても、交流会なんて初めてだよね。企画したの、東雲酒造さんなんでしょ? お姉ちゃん、何か聞いた?」
「さっきの夕飯の時間にちょっと聞いてみたけど、ただの思いつきだって言ってたよ。なんかはぐらかされた感じはするけど……」
「でも、普段他の酒蔵の子と話すことなんて無いから楽しみ! 友達できるかなぁ」
今私たちがいるのは、海沿いに位置する古びた旅館のロビーだ。なぜ私たちがこの旅館にいるかと言うと、県内各地の酒蔵の娘たちを対象にした交流会に参加するためである。
先月、両親から突然この交流会に参加するようにと言われたときは訳が分からなかった。というのも、今までこんな大規模な交流会が催されたことは無かったからだ。しかも両親は参加せず、交流会に参加できるのは“十六歳以上の酒蔵の娘”という限られたものだった。
両親、それから先ほど挨拶をした主催者である東雲酒造の社長さんの話によると、若い世代に改めて基礎から酒について知ってもらい、そして同じ地域の酒蔵同士の交流を深めるための会──だそうだ。
「でもさ、何かおかしくない? お酒の勉強とか交流を深めるとかは分かるけど、それならなんで女子だけなんだろ?」
「確かにー。どうして男の子はいないんだろうね?」
夕月と小春が首を傾げる中、私もそれについては疑問を抱いていた。目的がそれならば、むしろ男子限定の交流会を開いた方が良いだろう。私たち姉妹は例外だが、基本的には男子が酒蔵を継ぐことになるのだから。
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